「…。」
「教えて頂けませんか。」みずきは、顔を背けた。
岡田が、代わりに話した。
「大山さんは、過去に君みたいな新人とペアを組んでいた時代があった。」
「…。」
河内は黙って聞いている。「その新人は、『自分の思った街づくりをしたい』と言って、大山さんの指示に従わず、新人1人で街づくりの計画を進めていたんです。」
「そうなんですか…。」
「それから、実際に新人の考えた街づくり計画で工事が進んでしまい、何も考えない新人だったから…、計画の内容はダメダメだった…。当時の事務所長も、なぜこの計画を認めたのか分からないけど、案の定その街はボロボロになって…地元住民の反発が凄くて…。その責任が、年上である大山さんに全てのしかかってきて…。それから大山さん、毎日謝って、謝って…大変だったんだと思う。けっこうやつれてたから。」
『街づくりコンサルタントは、失敗は許されないのよ。街づくりに失敗したら、永久的に事務所に泥を塗ることになるわ。』
その言葉が、こんな意味を持っていたなんて…。
「とりあえず…明日、僕大山さんに謝ってきます。」岡田は小さく頷いた。みずきも、
「その方がいいと思う。」河内は、心に穴が開いた大山の事を考えると、悪口を言ってしまった自分が悔しくて仕方なかった…。