身体が動かない…。
手術からまだ2日後だからだろうか。
まぁ、今…焦っても仕形がないか。
日頃、忙しくて寝る暇が欲しかったくせに、もう…寝ている事に飽きた。
つくづく勝手な思いだ。楽しみといったら、食事と若い看護士との会話だけだ。
「よっ!」
現れたのは、親友?悪友?…腐れ縁の大悟(だいご)だ。
「おぉ、とりあえず暇つぶし用品持ってきたか?」
「そんだけ、うっせぇ事言えるんだったら、大丈夫だな!ほら」
「流石!大悟ちゃん。わかってるねぇ。」
大悟は、俺が欲しがっていた物を完璧に持ってきてくれた。
「空斗まだ寝たままか?」
「脊椎やっちまったらしいから、もうしばらくはな…」
「休暇にしても、ちょっぴり辛い休暇になっちまったな。」
流石に長い付き合いだと楽だ。大悟は、俺が不安にならないように微妙な心のコントロールをしてくれる。
本人には、死んでもそんな誉め言葉は、言いたくない。
2、3時間して大悟は、帰った。
病院ていうのは、暇なところだ。
会社の人は、一度、部長が来たきりだ。
同僚さえ来ない。
まぁ、俺も昔はそうだったから人の事をとやかくいうつもりはない。
しばらくして…担当医が来た。
「調子はどうですか?…」
「だいぶ楽になってきました。」
「そうですか?術後の経過と身体の反射の診断をします。」
「…はっはい」
僕は、はやく連絡したく「感じますか?」
「いえ…。」
医師がなにやら俺の足元で何やらやっていた。
俺は、全く解らなかった。
「…。高嶋さん」
嫌な雰囲気になってしまう。
「やはり…脊椎の損傷による、麻痺が残ってしまったようです。リハビリによって、少しは、よくなるでしょうが…。
車いすでの移動が中心になるでしょう…。」
全く思考が働かない。
ヤバい。
人生で一番…ヤバい。
下半身不随と急に言われて戸惑わない人なんていないだろう。
なんとも言えない、怒りと絶望感だけが頭の中を支配した。
いっそのこと死んでしまったほうが良かった。
俺は、自分の足を叩いてみた。…痛くない。
何度も叩いた。
感じてくれ。
涙が止まらない。
俺の人生は、なんだったんだ。
これから俺の生きる意味があるのか…?
麻耶もきっと…離れるだろうな。
仕事もきっと…。
全てを失うのだろうか…?
現実から逃げたくてただただ眠り続けた。