携帯小説家・Dの苦悩 5

デフレーター  2010-07-12投稿
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「そうそう簡単にいい作品なんか書けませんよ管理人さん…」
Dは自信なさげにつぶやく。
「さっきまで自信たっぷりだったくせに。」
「いやー管理人さんに目の前で否定されたら自信もなくなるって…」
「大丈夫だ。お前スジは悪くない。あとは書いて書いて書きまくって勉強する。そしたら閲覧者急上昇だぞ。」
渉はDの肩を叩いて励ました。
「本当に?」
「分からん。」
「なんだよ。」
「まあサイトには色んな作品載ってるし。読んでみるのも勉強のうちだろ。」
「なるほどねぇ…」
Dは他の作者の作品を読んだ。どの作品も面白く、オチも秀逸だ。
「初めは他の人の真似から入って…慣れてきたら他の人が書かないようなテーマで作品を作るんだよ。」
「他の人が書かないテーマ…なんだ…?」
「それはお前が考えるしかないだろ。」
「案外難しいもんだな。携帯小説って。」
「何だよ。もう諦めんの?」
「諦めない。」
「即答だな。…じゃあ頑張れ。考えてりゃそのうち突然アイデア浮かぶだろうし。」
渉は立ち上がった。
「何にしてもまずは文章力だな。お前のは稚拙すぎるから。」
「文章力ねぇ…」
「テーマはそんなに悪くないからあとは文章力と表現力。これからじっくり養っとけ。…じゃあ俺そろそろ帰るわ。」
渉はDの部屋のドアに向かい、ノブに手をかけたところで振り返った。
「あ、そうだ。お前投稿するときちゃんと確認しろよ。たまにペンネーム間違ってるから。気づいて直してるけどな。じゃあな。」
「あ、ああ…」
一人になったDは再び考え始めた。
「他の人が書かないテーマ…面白いやつ…」
その時、Dは閃いた。それこそ突然アイデアが浮かんだ。
「そうか!今の渉とのやり取り小説にすれば面白いんじゃないか?…テーマとしても珍しいし。よし…」
Dは真剣な表情で画面に文字を打ち込んでいく。「携帯小説家物語…作者、D…と。」
投稿ボタンを押す。
「よし。完璧だ…」
Dは得意げに笑った。



翌日、Dの作品はサイトに掲載された。





タイトル:「形態小説家物語り」
作者:M







おしまい


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