少女はそれを聞くと少し目を伏せて何か考えているそぶりをし訝しげに見る店主に目を戻した「宿は他をあたります。一つお伺いしたいのですが、こちらは人がかなり出入りされてるようなので…魔竜ザイラスについて何かご存知ないでしょうか?」
「魔竜だとぉっ!?」
店主の驚愕の叫びはかなりのざわつきだった店内に瞬時に静寂をもたらした。
一斉に赤い衣をまとった少女に店中の視線が注がれる…
少女はその異様な空間に別れを告げるべく
「ありがとう。」
と、店主に微笑み後ろ足でその場を立ち去った。
朝になると街は昨夜ランタンに訪れた赤い衣の少女の話題で持ちきりだった。
ただでさえその風体で人々の関心をひいたが、少女が言った魔竜が何より人々の心に不安や恐怖と共に居座った。
少女は昨夜ランタンの店主が言った老夫婦の宿「鳩のとまりぎ」に泊まっていた。
ずぶ濡れの赤いマントは店主の妻の手際の良いクリーニングですっかり乾き、一層その赤い色を鮮やかにしていた。