「義さん、今楽しいですか?」
由美の案内で、テーマパークにきていた義人に由美が、ふいに質問した。
「うん、俺の仕事も同じだからさ、お客さんの立場って、あまりないからね。…ああ、今俺は客の立場なんだと。ゆっくり出来てるよ」
「良かった…。私もね、家の事情もあるし、なかなか遊ぶ機会がなかったから、嬉しいよ」
「こちらこそ。俺なんかと過ごして、それで『楽しい』と思ってくれるなら、こんな嬉しいことはないよ」
由美は、少し泣きそうになっていた。
「ごめん…。なんか気にさわるようなこと言った?」
「ううん。義さんは優しいなあって思って。あの飲み会の時、私の事情を話して、こうやって、こんな遠くまで来てくれる…私の過去の恋愛も、聞いてくれてる…そんな人、なかなか巡り会えなかったから…」
「俺はルックスも良くないし、おじさんだし、それでも、自分に接してくれる人達には、つながりを大事にしたいと思ってね…」
「私だって、全然だめですよ」
「そんなことないよ。由美さん綺麗だし、俺は、一緒に歩けてるだけで、幸せだよ」
「ありがとう…私東京に行ってみようかなぁ…」
「え?」
由美の言葉が、少し本心を言ってることは、義人も感じ取っていた。
「でも…手伝いとか大丈夫なの?」
「うん、あのね、両親も一度休んで、東京の味を楽しみたいって言ったるんだ。
友達も行きたいって…」
「そう。確かに休養を取るのは、勇気いるけど、倒れたら困るしね。」
「だから、そっちに行ったら、いろいろと案内してね」
「構わないけど…友達や、ご両親に迷惑かからないかな?」
「全然だよ。友達も、こっちに知り合いいるし…お父さん、お母さんも、たまにはデートさせたいし…」
「そう…じゃ、喜んで、お供しますよ」
「うん…宜しくね」 2人は、前よりも更に打ち解けることが出来たと感じた。
だが、由美は、義人の心の闇を、まだ知らなかった。
そして、お店が近く閉まることも、まだ言えないでいた。