「…あ、そういえば…一度だけメディナさんが『この剣は正しい事の為に使われるべきよね…』みたいな事をつぶやいた事があったっけ…」
「…!」
リリアは目を大きく見開いた。
「正しい事か…難しいよな…」
ザックは剣を持って鞘を撫でた。
黄色いそれはランプの光を受けて白く輝いている。
「さて、明日も畑仕事と訓練が待ってるし、早く寝ないとな!」
ザックは体の疲労を振り払うようにして椅子から勢いよく立ち上がると、大きく伸びをした。
「お休み、リリア」
「あ…お休み、ザック」
リリアは手を振って寝室に向かうザックを呆気にとられたように見つめながら、挨拶を返した。
―行動が早い時と遅い時があるから掴みどころがないのよね。ザックは。
彼女は苦笑いをして、ランプの明かりに目をやった。
―あの剣がクリスタルクラッシュが使っていたものだった可能性が高くなったわね…。
心が微かにざわめくのを感じて、彼女はランプから目を逸らした。
―姉の命を奪ったクリスタルを用いて戦っていた剣なのかしら?
彼女は唇を噛んで、激しく首を横に振った。
ランプの光が微かに揺れ動いて、彼女の影を小さく揺さぶった。