チンゲンサイ。<47>

麻呂  2010-07-14投稿
閲覧数[416] 良い投票[0] 悪い投票[0]


ユキエを職場まで送り届けた後、帰宅すると、


リョウは、すでに学校へ行ったらしく、ユウは、リビングのソファ―に座り、


テレビを見ていた。


『ユウ。昨日の傷は傷むか!?』



当たり前だろうが、本日初の親子の会話は、やはりここから始まる。



『うん。昨日より腫れてる気がする。

それより親父、母さんと学校へ行って何を話して来たの!?』



必ず聞かれるとは思っていた。


ユウ自身、昨日の俺とユキエの会話の内容から、おおよその見当はついているはずだ。



『お前の担任の本橋とクラスメイト全員に会って来た。』



『…………。』



ユウは、俺の顔をマジマジと見つめ、何か言いたげな表情をして見せたが、


次に口を開いたのは、俺の方が先だった。



『母さんがな‥‥あのおとなしい母さんが、お前のクラスメイト全員の前で話したんだ。

内容は、お前があのクラスの連中からイジメを受けている事についてを、

ストレートに述べるものではなく、間接的に話してはいたが、

あのクラス全体がイジメの当事者であると知った以上、

母さんが話した事は間違いではないと思っている。

あのクラスの連中がバカでない限り、俺達が、あの場を借りてまでして、

何を言いたかったのかという事は、理解出来ると思う。』



ユキエが言わなくても俺が言っていた。

その時点で、少なくとも俺達夫婦は、意見が一致していた。


『‥‥マジかよ‥‥‥。俺、もう学校行けね―よ‥‥‥。』


『ユウ。

父さんと母さんが今日、学校へ行った事によって、

お前が学校へ行きにくくなったという事については、

申し訳ないと思っているが、

お前の親として、父さんも母さんも、どんな事をしてでもお前を守る。

それだけの覚悟をしてとった行動だという事は分かってほしい。』



一言つぶやくように、ユウが漏らした言葉に対し、


俺が返した言葉は、おそらく、昨日までの俺とは違うものになっていただろう。

あからさまに否定をするだけの。


子供にとっては、はた迷惑な言葉とは違うものに。



投票

良い投票 悪い投票

感想投稿



感想


「 麻呂 」さんの小説

もっと見る

その他の新着小説

もっと見る

[PR]


▲ページトップ