チンゲンサイ。<48>

麻呂  2010-07-14投稿
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『言いたい事は分かってるよ。

でもやっぱ行きにくいじゃん。』



ユウのシュンとした表情を見ると可哀想だと思ったが、


親として、ここはどんと構えるべきだろう。



『あの本橋という男は、なかなかのクセ者だ。

ユウ、気をつけろ。
それと、あのクラスは何かがおかしい。
父さんは、そう感じたな。』



『父さんすげぇ。

昨日の“鼻くそボール”もすげぇと思ったけどさ。

あのクラスは本橋のおもちゃさ。

操り人形だよ。』



『操り人形?!』



『みんな、本橋の催眠術にかかっているようなものさ。

受験生は、内申書にヘタな事書かれたくないからね。』



『あぁ。そういう事か。

ところでユウ。
もうすぐ昼だし、腹減らないか?』



『別に‥‥‥。』



『まぁそう言うな。
父さん特製パスタ美味いぞ!!』



イジメ問題は難しい。


しかも、人生で最も多感なこの時期だ。

ユウが卒業するまで、まだまだ時間がある。


そして、おそらくは、それまで続いていくであろうこの問題に、


立ち向かって行くだけの気力も俺には十分ある。


無いのは就職口と金のみだ。


ある意味、怖いもの無しの今の状況。


開き直ったら案外強いのが俺。



『飯食い終わったら、母さんのママチャリを取りに行きがてら、ボーリングしてくか?』



『行かね―よッッ!!

親父一人で行って来いよ!!』



パスタをほおばるユウの顔が、


最近ますます自分に似てきたようで、


何だかよく分からないが、いい方向に向かってくれる事を願っている俺だった。



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