「…アルファ?」
応えてくれない。耳に入らないみたいだ。
絶対ヤバい、そう思った。彼の眼の輝きは、もはや決意の現れではない。
狂気。
この狂ったゲームのせいで、彼もまた、狂いかけている…?
私の不安をよそに、彼は新たに迫りくる追っ手を、…まさしく『ちぎっては投げ』るように、なぎ払いながら、先へ進んだ。
かなり狭いブロック塀の間にアルファはもたれかかり、私を降ろすと溜め息をついた。
「ここらは住宅街だから、昼間は人がいないな」
「…ねえ、いい加減に、少し休んで?」
「また、その話か」
冷たい声で言い放った。
「このままじゃ、あなたは人を殺しかねない!」
「・・・」
私は必死だった。彼にどうしても、『眼を醒まして』もらいたかった。
これで彼も承諾してくれるはず、そう思っていた。
が、
「構わない」
「どうして!?」
「このゲームに勝てるなら、例え殺人鬼として捕まったって、処刑されたって後悔はしない!それだけ勝ちたいんだよ、俺は!」
声を荒げてそう言ったものの、眠っていない彼はろくに声も出せずにいた、それもまた救いだった。
「でもその前に、あなたが死ぬかも知れない!!…それにそんなの、ゲームへの敗北を認めるのと同じ事よ!絶対に無実を証明して、真犯人を捕まえるの。それが本当の勝利、そうでしょう?」
私は泣きそうだった。
「私は、あなたが心配なだけ、ただそれだけなのよ!」