誰がために、何がために?

萩原実衣  2010-07-15投稿
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俺は、気力というものが自分に存在していない事に思わず、笑ってしまう。

間が悪い…。
麻耶が来た。

「元気にしてる??
空斗に何買ってきていいか解らなかったから、雑誌とあの店のシュークリーム!はい!」

「あ〜。ありがとう。」
「あんまり、感動してくれないのね。シュークリーム1時間並んだのになぁー。」

「ごめん。今は…あまり食べたくないんだ。」

麻耶は、俺を楽しませようと色々と話をしてくれていた。

俺は、しだいにそんな麻耶に苛立ちを覚えた。

「まや…。そろそろ独りにしてくれないか」

「えっ?久しぶりに逢ったのに…。30分て…。静かにしてるから、もう少し、側にいたい!」

「頼むから…独りにさせてくれ!」

俺は、始めて麻耶に大声をあげてしまった。
麻耶は、何も言わずに病室を出て行った。

(ごめん。)
心の中でそう叫びながらも自分を保つ事ができなかった。

これでいいんだ。

麻耶がこのまま離れて行っても仕方ない。

いや…?その方がいい。
「高嶋さん!検温ですよ!」
威勢のいい看護士長が入ってきた。
「今日は、士長さんが担当?」
「喜んでくれる?ってそんなにハズレくじ引いた顔しなくてもいいんじゃない?」

「いや…。違うんですよ。ちょっと彼女にあたってしまって…。」

士長は、血圧を計り終えると体温計を挟んだ。

「あらそう。高嶋さん後でくるわねぇ」

そう言いながら、あっさり病室をあとにした。

「まぁ、俺の愚痴聞いてる暇なんてないか。」

しばらくして、士長が来た。
「高嶋さん、体温は…?っと〜平熱ですね。」
そういうと士長は、椅子に腰かけた。
「さて、聞きましょう?彼女に当たったの?」
士長は、俺のために時間を作ってきた。

「何だか…元気に楽しそうに話す彼女が羨ましかったのと、どうにもならない自分にイライラして」

「そうか…。
ずーっと病院にいたら誰だってそうよ。でも、わかってるんでしょ?
悪い事したって!でないと、あんな顔しないわよ。今度、来たら一言謝ってあげれば大丈夫!」

「もう…来ないかもしれない」
「来るって!彼女看護士達にあなたが普通に食べられるか?何をすればいいのか?尋ねたわよ。だから…また来るわよ!」
麻耶と士長の明るい温かさに触れ少しだけ今を好きになった。

内緒で士長と食ったシュークリームがやけに美味かった。



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