今度はその穴に手を入れてみる。
穴は二股に分かれていて、まっすぐ貫通しているのとは別に、途中から真下に向かっている穴があった。
そこに手を突っ込んだ明彦は、ビクッとして手を引っ込めた。
何か毛のような物が触れたからだ。
しかし、ここでやめるわけにはいかない。
彼は意を決してもう一度手を入れた。
そして恐々とそれに触る。
それが動く気配はない。
生き物の温かさもないし、かといって、死んでいるものの冷たさもない。
彼は思い切ってそれを掴むと、取り出した。
「なんだ、脅かしやがる」
それはヒヨコの形をした縫いぐるみだった。
背の部分にチャックが付いている。
明彦はそれを握りながら降りてきた。
「何を見つけたの?」
「その手に持っているのはなんだ?」
次々と浴びせられる質問を無視して、明彦は縫いぐるみの小さいチャックを開けて、中から四つ折りの紙を取り出した。
それを開いて読み、彼はニヤッと笑った。
『この木の根が
二つに分かれた
その真ん中
ここ掘れ ワンワン』
その紙にはワープロ文字で、そう書かれてあった。