欲望という名のゲーム?56

矢口 沙緒  2010-07-15投稿
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明彦はその大きな木をぐるりと回り、根を調べた。
あった!
一ヵ所だけ根が露出していて、それが二股に分かれていた。
しかもそこは林の内側、つまり雅則の言う『O・B』よりも内側になっている。
彼は陣地を死守する兵隊のように、その場所にどっかりと胡座をかき、腕組みをした。
「鹿島、今度はスコップだ。
スコップを持ってきてくれ」

鹿島がスコップを取って戻ってきた。
明彦はそれを受け取ると、今自分が座り込んでいた所を掘り始めた。
それを喜久雄達は黙って見ている。
四月とはいえ、天気もよく日差しも強い。
明彦はすぐに汗をかき出し、上着を脱ぎ捨てると、再び作業に戻った。
「明彦さん、その紙には何て書いてあったの?」
友子が言うと、明彦は紙を友子に手渡しながら、
「いいか!
これは俺に権利があるんだ。
その事だけは覚えておけ」
そう言って、また作業を始めた。
友子の受け取った紙を、鹿島を含めた四人が覗き込むようにして読む。
「決まりだな」
喜久雄が諦めたように言った。
「ねぇ、明彦兄さん。
穴を掘るの代わろか?」
深雪がおずおずと言うと、明彦は噛み付きそうな顔で深雪を睨む。
「余計な事を言うな!
いっさい手出しするんじゃないぞ!」
そう言って、また黙々と穴掘りを続ける。
その頃になって、孝子が来た。
「ねぇ、宝物見つかったの?」
のんきな口調で皆に聞いた。
「見つけたわよ、
こいつが!」
そう怒鳴った深雪の手が、わずかに震えていた。



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