記録的集中豪雨。
テレビなんかでよく言われるアレが、いま目の前で起こってる事実。
青空、白い雲、輝く太陽…そして夏休みとくれば、僕らはキャンプにくるわけです。
高校三年の最後の夏休みとくれば無理してもキャンプに来たわけです。
そして。
僕ら三人は氾濫した川を目の当たりにし、テントは流され、たった一個のザックを抱きしめ茫然自失しているんです。
「…なあ」
岡崎拓斗は泥だらけのシューズを見下ろしながら呟いた。
必死で避難したこの場所から氾濫した川は見えないけれど未だ降り続く雨が足元の斜面を滝のように流れている。
「どうしよう」
拓斗、原田圭司、俺…笹野修也の頭の中を除き込めばその一言で埋め尽くされているに違いない。
けど、それに続く答えを持っている奴はいないんだ。
「携帯、流れた」
圭司が疲れきった声で言う僕が思うに、携帯があったところでここは圏外だし、どーにもどーしょうもないわけですが、僕ら高校生にとって携帯という存在はアイデンティティーに匹敵する存在なんです。
だから、僕は圭司に同情を示す最大限の言葉をかけた
「ん」
…これから、どうしよう…