「お前なんかまさにクラスの象徴だよな。裏切り者。」
冷酷な口調で清香を裏切り者呼ばわりする篤史。
「ほんとのこと知ってるくせに周りがギャーギャー言いはじめたから知らんぷりした。もう最低どころじゃねーな」
「ごめんなさい…」
清香はその場に崩れ落ちた。
「何今更謝ってんだよ。お前は最低以下の裏切り者。それだけだ。」
「篤史!」
杉本が篤史の頬を平手で叩いた。
「清香だって苦しかったんだ…自分がした行為が裏切りだってことは、痛いほど分かってる。もちろん皆も…なのに…どうして追い討ちかけるようなこと…お前はそんな生徒じゃなかっただろう…」
「あーあーこんだけ言っててもまだわかんねーのかよクズ教員が!」
篤史はかつてないほどの冷酷な視線で杉本を睨んだ。
「よくこんなどうしよーもないガキ共の肩なんて持ってるな。さすがこいつらの担任だな。」
杉本は黙ったまま篤史の目を見る。
「てめーらがどんだけ苦しもうと関係ねぇんだっていってんだろ。ましてや俺が受けた屈辱からしたら遥かに軽いだろうが。」
「そんなに言うなら何で嫌だって言わなかったの?」
清香が問い掛ける。篤史はうんざりしたように言った。
「てめーら否定されて従うような連中じゃねぇだろ。俺をとことんバカにすることで面子保とうとしてる奴らに何言ったって無駄だもんな。一応喜んでるフリしてやってたんだよ。」
黙ってばかりの杉本達を見て、篤史はさらに言葉を続ける。
「けどこないだのことでもう限界だと思ったね。クラスの平和のためなら一人を悪者にすることなんか気にもならない。あんたらはそういう奴らだって分かったからな。」
誰も何も言い返せなかった。
篤史の態度は引っ掛かるものの、言っていることは一切否定できない。
杉本達の間に、諦めの雰囲気が漂い始めた。
「篤史…どうかもう一度、冷静に考えてほしい。卒業式、出席してほしいんだ。それが終わったら、すぐに私達のことは忘れてくれて構わない。篤史も…クラスの一員だったじゃないか。辛いことが多かっただろうけど、楽しかったこともあったはずだぞ…だから、その時の思いで、どうか…頼む。」
杉本は土下座した。
「俺も…頼む」「私も…」
一晃達も床に頭を付ける。
篤史はその様子を冷めた目で見ていた。
続く