アルファはブロック塀にもたれかかったまま、腰を下ろした。
「少し、寝た方がいいわ。」
「…でも、」
「この辺りは、昼間は人がいないんでしょ?
私も見張ってるから、ね?少しでも、お願い」
「・・・。」
「あなたの体が心配なのよ」
「…わかった。けど、誰か来たら、遠慮なく、俺を…」
「・・・。」
そのまま何も言わない。
…つついてみる。
「…もう寝ちゃった」
それだけ疲れていたのに、無理矢理にでも、走り続けた…
なんて強靭な精神…いや違う、彼をここまで支えているのは、このゲームに負けたくないという意地だけだ。
どうして、そこまでして勝ちたいの?
心の中で問いかけてみた。
そっと、彼の頭を撫でた。眠っている間、人は子供のようになるというけど、本当だなあ。
…彼が苦しそうな顔をした。
「夢でも、見ているのかしら?」
処刑される夢、だったら嫌だなあ、と思いつつ、彼の手をとった。
彼は早くに目が覚めた。
もう少し寝てればいいのに、と言う私の腕を引き、もう眠れないよ、と笑いながら、少し強引に歩き出した。
The Last Escape 第三章『兄妹』(予定)に続く