何日かして麻耶は、あっけらかんとした表情で見舞いにきた。
母親が帰った直後で、ギリギリの入れ替わりだった。
別に、会わせたくないわけではないが、何だか…こっぱずかしい。
俺は、摩耶に伝えなきゃいけなかった。
それが今の突き付けられた現実だ。
「麻耶…。」
「何?」
「会社…。どうなってる?」
「空斗がいないから大変みたいよ。みんな早く戻って来て欲しいって言ってるよ。そろそろ…退院じゃないの?
「まぁ…。でも…前のように働けないんだ。所属変更が必要だろうな。もしかしたら…辞める事になるかもな。」
「なんで?何言ってるの?」
「麻耶…。俺の足前のように動かないんだ。
後遺症だよ。車椅子生活が中心になるだろうだってさ。」
「えっ…。」
「麻耶…。哀れむなよ。お前は、お前で結論をだしてくれ。これが、現実さっ」
俺は、一気に喋った。
麻耶は、「何も変わらないよ」と笑っていた。
でも…俺は、意外と冷静に考えていた。
結婚を考えていなかった訳じゃないが、付き合っている中で、何か心のズレを感じていたが、流されていた。
もしかしたら…
惚れてないのか?とも思ったりして…。
麻耶は、良い女だ。
モデル並の容姿に気が利く。俺にはもったいないと…。
周りは言う。
でも…燃えるような恋?心が引き寄せられる?
そんな恋とは離れていた。
麻耶は、その後も見舞いに来ていた。
俺は、リハビリに入った。
麻耶は、じっとリハビリの様子を見ていた。
彼女は、現実をようやく感じ始めたようだった。見舞いに来た時に、時々考えている表情を見せていた。
麻耶は、それでも俺の世話をしてくれていた。
俺は、母親に会わせる決心をした。
「麻耶、明後日って来られるか?」
「たぶん、大丈夫」
「母親に逢ってくれないか?」
「えっ!あっ、うん」
麻耶は、びっくりしていた。
2日後、母親が来た。
「空斗、あと2週間で退院だってさ。お前しばらく、実家戻っておいで。今のマンションじゃ車椅子大変だろうし…」
「あぁ、そうするよ。悪いな母さん。面倒かけるね」
母さんといつもの話をしながら、俺は麻耶を待った。
母さんには麻耶が来る事を伝えてない。
何時間たっただろう…。
その日、麻耶は来なかった。
退院が近づく。
あれから、麻耶の姿を見る事はなかった。