欲望という名のゲーム?65

矢口 沙緒  2010-07-19投稿
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「トランプのクイーンが捕らわれている場所。
…それはトランプの箱の中」
「姉さん、鋭い!」
「でしょ。
でも問題はどの箱かって事よ。
そこで例の『ピカソ』よ。
この屋敷にあった絵は全部見たけど、ピカソの絵はなかった。
だけど、どこかにピカソの絵がなければ、おかしいじゃない。
それでまた、ひらめいたの。
この大量のトランプの中に、ピカソの絵のトランプがあるんじゃないかって。
もしあれば、それが目的の箱よ。
その中のクイーンに、きっと手掛かりがあると思うのよ」
「なかなか考えたじゃない。
それって面白い発想よね。
分かったわ。
さっそく見てみるね」
孝子は立ち上がり、壁一面に並べられているトランプを目で追い始めた。
とはいっても、並大抵の量ではない。
もしかしたら千を越えるかもしれないと思われるほど、トランプはあった。
大小はもちろん、円形の物、三角形の物、なんとも形容しがたい奇妙な形のもの。
孝子はそのひとつひとつを目で追っていた。


深雪と孝子のいる二号室の隣の一号室では、喜久雄と友子が白のクイーンを探し求めていた。
朝食後に、友子がある事に気がついたのだ。
「ねぇねぇ、あなた。
トランプのクイーンって、アルファベットの『Q』で表すわよね。
だとしたら、チェスのクイーンも『Q』で表すんじゃないかしら?」
と言い出した。
「そうかもしれないが、それがどうした?」
「クイーンがどこにあるかは分からないけど、でも『Q』なら三階の一号室にあるじゃない」
「三階の一号室に『Q』がある?
…あっ、ビリヤードのキューか!」
二人はその足で三階に駆け上がり、一号室に飛び込んだ。
しかし、必死の探索にもかかわらず、いまだに何の成果も得られなかった。


孝子はまだ三分の一のトランプも見終わってはいなかった。
「ねぇ、孝子。
トランプのクイーンって、隅の所に『Q』って書いてあるわよねぇ」
深雪はさっきまで孝子が使っていたトランプのクイーンをつまみ上げて言った。
「うん、書いてあるよ」
無数に並べられたトランプから目を離さずに、孝子が答える。




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