「それって十分なスタミナじゃないですか!」
ダリルとエナンは驚いて起き上がった。
「十分?いいえ、それは違うわ」
メディナは首を横に振る。
「先ほど言った兵士十人と三十分、というのはあくまで技量と実戦経験が対等な立場であった場合よ。もしも今、兵士十人を相手にしたらもって五分がいいところね」
「五分かあ…」
ダリルは残念そうな表情で再び地面に寝転がった。
「大丈夫よ」
メディナは小さく微笑んで、
「保養所が出来るまでの間にあなた達を兵士十人と同等の実力にしてみせるから」
と、言った。
「お、お手柔らかにお願いします…」
エナンは口元をひきつらせて、懇願した。
「ふふ…」
メディナはニヤリと笑いながら、髪を掻き上げた。
「あ、そうだ…メディナさん、弟さんやご家族は元気にしているんですか?」
ザックはゆっくりと起き上がって頭を振ると、世間話をするような感じでメディナに話しかけた。
「弟?」
ダリルは不思議そうな表情でザックを見た。
「いや、弟さんとご両親が故郷にいる、っていう話しを聞いていたからさ」
「…」
メディナは眉間にしわを寄せて、唇を噛んだ。
「え…?ど、どうしたんですか?」
「…何でもないわ」
「でも…」
「何でもないと言っているでしょう!」