欲望という名のゲーム?66

矢口 沙緒  2010-07-21投稿
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「じゃ、チェスのクイーンも『Q』で表すのかしら?」
「確かそうよ」
「だったらさ、隣のビリヤードの部屋にある『キュー』って、ちょっと気にならない?」
「全然。
だってスペルが違うもん。
ビリヤードのキューは『CUE』って書くのよ。
アルファベットの『Q』とは、何の関係もないわ。
ちょっと発音が似てるだけよ。
それよりも、こんなのはどうかしら?
クイーン、つまり『Q』が捕らえられているのは、アルファベットの中だったら『P』と『R』の間よね」
深雪はアルファベットを頭の中で、順番に暗唱しだした。
A・B・C・D…
「そうね。
O・P・Q・Rと続くから、確かに『P』と『R』の間だけど…」
「だから、『Q』は『P・R』の中にあるって事じゃないかしら?」
「『P・R』って、いったい何なの?」
「私は『プレイング・ルーム』だと思うのよ。
つまり、遊技室の中」
深雪はハッとした。
同時に自分の考えに、強い確信を感じた。
三階にある六部屋の遊技室の中で、あのチェスの部屋を除けば、『Q』があるのは一号室のビリヤードのキューと、トランプのクイーンしか思い付かない。
しかし、孝子はビリヤードのキューは違うと否定した。
残るはトランプのクイーンだけだ。
これでもし、ピカソの絵柄のトランプがあれば…
「あら、このあたりのトランプは名画シリーズって感じよ。
ほら、これがロートレックでしょ。
ドガにマリー・ローランサン、シャガール…
あっ!
あったわ!
ピカソのがあったわよ」
深雪は孝子のそばに走って行った。
「どれ?」
「これよ。
これはピカソの『ゲルニカ』という絵なの」
孝子が指差すトランプを深雪は見た。
そのトランプの裏には、確かに奇妙な絵が描かれていた。
深雪には、その絵が何を描いてあるのか、さっぱり分からなかった。
しかしピカソという画家が、さっぱり分からない絵を描くということは知っていた。
「深雪姉さん、もしかしたらビンゴかもしれないわよ。
だって、ほかの画家のトランプが複数あるのに、あの有名なピカソのトランプが、たったひとつだけっていうのは、何か妙だもんね」
しかし、深雪はもう孝子の言っている事を聞いてはいなかった。
そのトランプを掴むと、ブラックジャックのテーブルに向かう。
孝子もそれに続いた。



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