「ほら、笑った!」
「御免なさいね。
ほんと、ごめん。
雅則兄さんにも謝らなくっちゃね。
でも、あんまりおかしくって…」
そう言いながら、まだ笑う。
「そんなにおかしいかしら?
だって、女の人に髭があるのよ。
あたしの頭じゃ、おかま以外何も浮かばないわ」
「おかまっていうのは、見事な発想ね。
でも、それもちょっと変よ、この場合。
だって、おかまっていうのは、女っぽい男の人のことでしょ。
つまり、そのベースは男なのよ。
女のような男ね。
そういう意味でいうなら、このカードはまるっきり逆だと思わない?
だって、女の人に髭があるんだから。
ベースは女よ。
だから、男のような女ってことよね」
男のような女?
何かが深雪の脳細胞を、少しだけ刺激した。
なんだろう?
どこかでそんな話を聞いたような…
「男みたいな女って、何かなぁ…」
孝子が考えながら、思い付く事をひとつひとつあげていく。
「男装の麗人、勝ち気な女、男まさりの女、男のように働く女、あるいは…」
「分かった!」
深雪が大声を上げて、立ち上がった。
「戦争よ!
男のように戦う女よ!」
そう叫んだ深雪は、孝子を残したまま部屋を飛び出した。