(たった3年…?)
普通傷害罪ともなると
しかも俺のように悪質だと
無期懲役も免れないはずなのに
言い渡された判決は、
わずか3年だった。
(よっしゃあ!)
俺は心の中でガッツポーズした。
3年ならばまだまだ人生のやり直しが利く。
彼女も待っていてくれるだろう。
しっかり罪を償って
2度と同じ過ちを繰り返さなければいい。
俺の心の中は
希望で満ち溢れていた。
護送車に乗せられ
3年間を過ごす刑務所へと向かう。
俺は乗り込んだ途端、おかしなことに気づいた。
俺と監視の警官、そして運転手以外、誰も乗っていない。
車の大きさからして、
10人前後乗っていても良さそうなはずなのに。
「あの…俺だけ…なんですか?」
俺は監視の警官に尋ねた。
「そうだ。」
警官はそっけなく答える。それ以上何を聞いても答えてはくれなかった。
刑務所までは、やたらと遠い道のりだった。
窓はスモックガラスで遮られ、外の景色が見えない。
俺はいつしかウトウトと眠り込んでしまっていた。
「着きましたよ。」
警官に叩き起こされて目が覚めた。
「あ、はい…」
俺は目を擦りながら立ち上がり、車を降りた。
「うわ…」
目の前に現れた刑務所を見て、俺は思わず驚きの声をあげた。
真っ白な塀に囲まれ、西洋館のような豪華な建物。
ぱっと見た限りでは、建物の全体を捉えることが出来ないほど巨大で、
同時にとても開放的な雰囲気だ。
これでも刑務所なのだろうか。
一流の貴族でも住んでいそうな建物だ。
警官に連れられて鉄の門をくぐる。
「ようこそ、いらっしゃいました。」
建物に続く砂利道で、大勢の人が俺を出迎えた。
俺は目を丸くした。
その中で、ひときわ目立つ真っ白な服と帽子を被ったおっさんが近づいてきた。
「私はこの刑務所の主任刑務官、高嶋と申します。」
「は、はあ…」
高嶋も、その周りの人達も、にこにこと微笑んでいた。
「池田真哉さん。罪状:傷害。懲役:3年。間違いないですね?」
高嶋は手帳を見ながら言った。
「はい…」
「今日から3年間、あなたはここで刑期を全うすることになります。」
高嶋は相変わらず微笑みながら言った。
続く