「この人達は…?」
俺は周りにいるグレーや白の作業着を着た人達を見回して言った。
「あなたと同じ、囚人です。あなたと同じように、いわゆる凶悪犯罪を犯した者達です。」
見た限りではとても凶悪犯とは思えないほど、皆穏やかな表情をしていた。
俺は少々落ち着かない気持ちになった。
「それでは池田さん、お部屋へご案内いたします。」
「あ、はい…」
俺は高嶋に連れられて建物の中へ入っていった。
どこまでも続いているような廊下。
高い天井。
いくつも並んだ扉。
刑務所とはまるで違う雰囲気に、俺は目を奪われていた。
やがてある扉の前で高嶋が立ち止まった。
「囚人の部屋は、この先です。」
扉が開けられると、そこは薄暗い下り階段だった。
先程まで通ってきた所とはうってかわって、
どんよりと、ひんやりとした空気が立ち込めていた。
それこそ昔の牢獄のようだ。
鉄格子の扉が廊下を挟んで続いている。
高嶋はそのうちの1つの鍵を開けた。
「お入りください。」
あくまで穏やかな表情で、高嶋は促した。
俺は言われるままに中に入った。
窓ひとつなく、天井から吊されたランプがわずかな明かりを点している。
部屋の隅にはトイレと簡単なベッド、毛布があった。
「それでは、これから3年間あなたにやっていただくことを説明します。」
高嶋は鉄格子の向こうから説明を始めた。
「これから3年間、この建物の掃除をしてもらいます。」
「は…?」
「必要な道具はこちらでお渡しします。それを使い、指示された場所を掃除してください。」
「ちょっと待てよ…普通懲役刑って言ったら何か造ったりするんじゃないの?」
俺は手先の器用さには自信があった。
刑務所に入ったら手作業や機械で工業製品を造るものだとばかり思っていた。
「意見は認めません。こちらの指示に従い、行えばよいのです。」
「…ただ、毎日ずっと掃除するのか?」
「ええ。」
「ふざけんな!」
俺は怒りを爆発させた。ただただ毎日掃除だけして過ごす3年間など、俺には耐えられない。
「俺は!更正するためにここにきてんだよ!毎日掃除ばっかやって、更正なんて出来るか!」
しかし高嶋は落ち着き払って言葉を続けた。
続く