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三階一号室を調べ尽くした喜久雄と友子は、なんら成果を得られないまま、がっくりと肩を落として部屋を出た。
そして、廊下を走る深雪とぶつかりそうになった。
深雪は二人にはまったく目もくれず、下に走り降りて行った。
「どうしたんだ、深雪のやつ?」
「深雪さん、血相かえてたわね」
すると、ニ号室のドアが開いて、孝子が顔を出した。
「深雪姉さん、見付けたかもしれないわよ」
孝子の一言で、二人は深雪のあとを追った。
鹿島の部屋の前の廊下を、誰かがバタバタと走り抜けて行った。
何事かと鹿島がドアを開けると、三階から喜久雄と友子が走り降りてくる。
「どうしたんです、いったい?」
「深雪が見付けたらしい」
喜久雄はそれだけ言うと、下への階段へ向かって、再び走り出した。
そして、鹿島もそのあとに続いた。
明彦は昨日の事がまだ諦めきれず、穴を掘った木の所へ来ていた。
彼が掘った穴は、すでに鹿島の手で埋められていた。
その周りを散々調べたが、もう何も手掛かりらしいものはなかった。
彼はこの場所に見切りをつけ、屋敷へと帰って行った。
明彦がホールに入ると、上から深雪が駆け降りて来たところだった。
「何があったんだ?」
「あたしに近寄らないでよ!
あたしが見付けるんだからね」
深雪は凄い形相で明彦を睨むと、怒鳴りつけるように言った。
その頃になって、上から喜久雄、友子そして鹿島も降りて来た。
「深雪さん、何か分かったの?」
友子が言うと、今度は友子が睨まれた。
「うるさいわね!
あんた達にいちいち説明する義理はないわよ。
あたしに近寄らないでよ!」
そう言って皆に釘を刺すと、深雪はホールに飾られている西洋の鎧の前まで歩いて行った。
これよ!
この鎧に間違いないわ。
男のような女。
男のように戦った女。
ジャンヌ・ダルクの鎧よ!
この鎧のどこかに、白のクイーンが隠されているはず。
それを見付ければ、あたしは一歩リードした事になる。
うまくいけば、そのクイーンを足掛かりに、簡単に財産に行き着けるかもしれない。
それがダメでも、白のクイーンさえ手に入れれば、また孝子をうまく利用して、きっと財産のありかを発見できるわ。