欲望という名のゲーム?70

矢口 沙緒  2010-07-22投稿
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深雪は鎧をガチャガチャと解体し始めた。
それは思ったよりも複雑で、関節の部分などに小さな死角がたくさんあった。
腕の部分、足の部分、胴の部分、裏を返したり、手でコツコツとたたいたりもした。
その様子を四人は、遠巻きに見ている。
それ以上近付くと、深雪が大声で騒ぐからだ。
その根気強い作業を、彼女は一時間以上も続けた。
すでに鎧は見る影もなく、鉄くずのような有り様に変化していた。
そして、その作業に没頭する深雪を、ほかの者も根気強く見ていた。
最後に彼女は兜の調査を開始した。
まともな姿で残っている物は、この兜ひとつになってしまった。
兜の内張りを勝手に剥がし、外れる部品は全て外したが、やはり何もない。
…あたしは間違っていたのだろうか?
…この鎧は、何の関係もないのだろうか?
そんな不安が彼女の脳裏をかすめた。
鎧は完全に解体した。
しかし、何も出てこない。
深雪はもう一度鎧の残骸を見詰めた。
何か見落としてはいないか?
本当に調べ切ったのだろうか?
彼女は再びガチャガチャと鉄くずを引っ掻き回した。
そして、見付けた。
彼女が唯一調べていない物を。
ジャンヌ・ダルクの剣だ。
鎧にばかり気を取られて、つい剣の事を忘れていた。
柄を握ると、深雪は剣を鞘から一気に引き抜いた。
それを見た明彦が、大声で笑った。
続いて喜久雄と友子もクスクスと笑い出した。
その剣には、文字が書いてあった。


 ジャンヌ・ダルクは
 クイーンにあらず

 ナイトなり

 あしからず
         』

「何よ、これ!
馬鹿にしてるわ!」
深雪は顔を真っ赤にして叫ぶと、剣を思い切り壁に投げ付けた。
「おいおい、危ないぞ」
明彦がニヤニヤしながら、からかい気味に言った。
「ふん!
笑えばいいわ」
深雪は鎧の残骸を蹴飛ばすと、階段に向かって行った。
「あの…
これはどういたしましょう?」
鹿島が鉄くず化した鎧を指差して、階段を昇りかけた深雪に聞いた。
「あなたが片付けてちょうだい」
振り向きもしないでそう答えると、さっさと上に行ってしまった。



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