「もう、しつこいなぁ!」
美しい桜色をしていたその花びらたちは、次第にその色を無くしていき、やがて鼠色をした醜い色へと変化していく。
「・・・桜は散り際が美しいのよ・・・」
その言葉の意味が理解できたのはシャープのみだった。
「ドロー!私にくっついて!」
「はぁ?何言ってんだよ?」
シャープは焦った。
「早くして!死にたいの?」
それだけ言うとシャープは片膝を立てて座り、杖を地面につき、体重を乗せ、集中し始めた。
その様子を見るや否や、ドローはそそくさとシャープの傍へよった。
「・・・お願い、上手く完成して!」
シャープは素早く立ち上がり、両手を広げ、天を仰いだ。
殺那、二人の周りから氷が出たかと思えば、氷はあっという間に二人を包み込んだ。
次の瞬間、醜い欠片は氷に向かって次々と襲いかかってきた。
「ダメだわ!もう、もう持たない・・・」
シャープに猛烈な眠気が襲ってきた。
そんなことは構わず、醜い欠片は尚も氷に襲いかかる。
「頑張れ!シャープ!」
ドローには励ますことしかできなかった。
だが、シャープには限界だった。
「・・・ごめん、なさい・・・私、ダメだった・・・」
その言葉を最後にシャープは深い眠りにつき、氷は消えた。
醜い欠片が二人に容赦なく襲いかかり、服を裂き、肉を裂き、鮮血の赤とと醜い鼠色が辺りを埋めつくし、やがて欠片は全て消え、ただ二人だけが虚しく残った。
タクトはオーケスの町中歩きながら、オーケスの変わり果てた姿に絶句していた。
「・・・ここが、本当にオーケスなのか?」
空模様と同じようにタクトの心もだんだん沈んできた。
「そうだ!タクトのお友達は?えーと、確か名前はー」
「ウェイトさ」
タクトは少し複雑な声で答えた。国立図書館での出来事を思い出したからだ。
「おい!貴様ら何者だ!」
四人の背後にはパラスの制服を着た兵士が立っていた。
フラットは「これは兵士さん」と丁寧な一礼をし、兵士に訊いた。
「『木彫りの不死鳥』の探索をしておりましたタクトの仲間のフラットと申します」
ニッコリと微笑むフラットの屈託のない笑顔に対比して、兵士の顔色はみるみる内に変わっていった。
「そうか『木彫りの不死鳥』か。それは、ご苦労だったな!」
兵士は突如、フラットに剣を振り降ろした。