ウェドが素早く二人の間に割って入った。
「随分な態度じゃねぇか。ガキが丁寧に挨拶してんだろーが!」
ウェドは兵士の腹を殴り一撃で気絶させた。
「たくっ!オーケスの兵士はろくに挨拶もできねぇのか?」
ウェドは右手を軽く振りながらタクトに訊いた。
「ウェド、ふざけないで。今の目は、確実に殺す気だった。それも『木彫りの不死鳥』って聞いた瞬間に明らかに態度が変わったわ」
パールが考えていた時だった。
「パールー!」
遠くから遠い昔に聞いたような声がした。その声は馬車に揺られながら近づいてくる。
パールは声の方を見やると明るいこえで馬車に近づいていった。
「ネートー!久し振りね!」
三人はパールの後に馬車の元へやってきた。
「ホース!」
パールは泣きそうな声で馬に顔を擦り寄せていた。
ウェドとフラットには訳が分からなかったが、タクトの記憶の片隅には確かに存在している。
まだ、パールと出会って間もない頃、パールがホースという名の馬と商売道具の馬車を預けた相手だった。
「ちゃーんと全部あるからね」
ネートーは馬車の後ろに回り込み、中を見せた。
タクトにはその中身がとても懐かしく感じられた。パールに商品を半ば強制的に買わされたのを思い出し、一人クスリと笑ってしまった。
パールは馬車の中からいくつかの品を持ち出し、三人にひとつずつ、手のひらに乗る程度の大きさの蒼く光る石を渡した。
「満月石だ!」
フラットが驚いた声を上げた。
「そう、これは不思議な石で、相手の事を考えながらこの石に話しかけると例えどんなに遠く離れていてもその声は届く。ただし、満月の夜にしかその効果は現れない」
パールは雲の切れ間から僅かに覗いた満月を仰いだ。
「その石、高いんだから、絶対返してよね」
絶対という言葉を強調した。
「え?くれないの?」
「バカ!レンタル料を取ろうか考えたくらいよ」
ネートーはパールに「顔が見れてよかった」というと馬車に揺られて帰っていってしまった。
「よし、じゃあ、行こうぜ。パラス城へ。さっきの兵士の態度の意味を訊きたい」
四人はパラス城へ向かい歩き始めた。
「・・・待てよ」
タクトは妙な胸騒ぎがした。
ゆっくり振り向く、
後ろに立っていたのは、予想通りの人物だった。
「・・・ウェイト」