森の中を一人の女性が歩いていた。
まだ顔に幼さが残る彼女の口元には笑みが浮かんでいる。
―何年ぶりかしら？
三年ぶりね、そう彼女は呟いて、愛する家族の顔頭の中で思い描く。
―弟の背はどこまで伸びたのかしら？母さんや父さんは元気でいるのかしら？
思い描いた家族の顔はどれも優しい笑顔を見せていた。
｢広い世界を見てみたい｣
そう言って家を出てから三年。
彼女はようやく一つの区切りをつけて、故郷に戻ってきたのである。
故郷の村が目の前に現れた途端、彼女は目を大きく見開いた。
焼けた柱があちこちに散乱し、屋根は朽ち果て、骨だけになった骸が仰向けに横たわっていた。
｢う…｣
彼女は口元を手で覆って、真っ青になった。
―どういう事！？
彼女は心の中でそう叫んで、首を大きく横に振った。
―そうだ、父さんは！？母さんは！？エルは！？
父親と母親、弟の安否が気になって、彼女は一目散に自分の家に向かって駆け出した。
―ハーツおじさん…レリアおばさん…。
骸に残った痕跡から、お世話になった村の人たちの名前が思い浮かんでくる。
彼女は走りながら声を震わせて、
｢誰がこんな事を…｣
と、呟いた。
そして、彼女は自分の家の前に立った。
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