私は､淳に悟らぬ様､そのｺﾋﾟｰ用紙を元のﾌｧｲﾙに入れ､鞄のﾁｬｯｸを閉めた｡
淳は､たまに､苦しそうに悶絶し､うめき声を上げた｡
私は､淳の意識が戻り､普通に話せる様になる事を祈っていた｡
中川は､麗華の他にも､高校生や大学生､主婦とも､関係している―＼r
初めて､事実を突き付けられ､麗華の事を思うと､胸が絞め付けられた｡
優しい､偽りの言葉を掛けているのだろうか―＼r
地位や名誉や金で､女性を騙しているのだろうか―＼r
考えても考えても､一切答えの出ない事を､ずっと考えていた―＼r
「う､うぅん･･･｡か､香里･･･｡」
淳は､うなされて居る様だった―＼r
私は､淳が私の名前を呟いた事に驚き､思わず叫んだ｡
「あっちゃん､あっちゃん!!」
気が付くと､淳の肩を必死で揺すっていた｡
「うぅん･･･｡うぅ･･･｡」
眉間に皺を寄せ､淳は苦しそうに､またうめいた｡
「あっちゃん､ねぇ､あっちゃん･･･｡目を覚まして｡ねぇ･･･｡」
淳は､さっきみたく目は覚まさ無かった｡
その時､病室のﾄﾞｱをﾉｯｸする音がした｡
ﾄﾞｱをゆっくり開くと､そこには茉莉子が立っていた｡
「淳は､どう?」
「苦しそうにしてるの､ずっと･･･｡意識は､あれから戻らなくて｡さっき､私の名前は呼んだんだけど･･･｡」
「そっか･･･｡彼女と店の子だけどね､今､帰った｡」
茉莉子から､七星が帰ったと聞いて､何故か､私の鼓動は高鳴っていた｡
安心とも違う―＼r
彼女の気持ちを考えると､自分の事の様に､辛くなった｡
「帰ったんだ･･･｡大丈夫そうだった?彼女･･･｡」
「大丈夫かなぁ?相当､参ってる感じだったけど｡自殺しなけりゃ良いけどね｡」
茉莉子は､冗談混じりに､笑って言った｡
「自殺なんて､縁起悪い事言わないで｡」
「冗談だよ｡自殺なんかする子なら､ﾘｽﾄｶｯﾄなんてしないで､とっくに､自殺しちゃってるって｡ただね･･･､さっき､香里から聞いた､淳が､香里にﾌﾟﾛﾎﾟｰｽﾞしたって話は､堪えてたみたいね｡」
当然な気がした｡彼女が病室を出て行く時の背中は､今まで見た事も無い位に､暗く､寂しそうだったからだった―＼r
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