欲望という名のゲーム?73

矢口 沙緒  2010-07-24投稿
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    3

いつもの時間に夕食は始まった。
しかし、昨夜とはやや様子が違う。
今日は明彦の機嫌が良い。
時々思いだした様にクスクスと笑う。
そのたびに、深雪が明彦を睨み付ける。
完全に立場が逆転した。
喜久雄と友子は、いつも通り何かをコソコソと相談している。
夕食が終わり、孝子にデザートが運ばれてくる。
「アイスクリームのグラタンでございます」
牧野が言う。
「アイスクリームのグラタン?」
「はい。
グラタンと申しましても、オーブンで焼くわけではございません。
バニラアイスに濃いめのカスタードクリームをかけ、その上にグラニュー糖を振りかけて、そのグラニュー糖をバーナーで焼き、焦げ目をつけた物でございます」
孝子はそれを一口食べ、牧野にOKサインを出す。
牧野はそれを見て、満足そうな笑顔をした。
その頃になって、ビデオを持った鹿島が入ってきた。
「食事はそろそろお済みのようですね。
では、さっそく本日分のテープをお見せいたしましょう」
例によってテレビが明るくなると、すぐに雅則の笑顔が映し出された。
「やぁ、諸君。
食事は済んだかな?
そうか、それは結構。牧野さんの料理はどれも一級品だからね。
十分に味わって欲しい。
さて、さっそく問題の宝探しゲームの話をするとしよう。
すでに諸君達にここに来てもらってから四日たつ。
チェスで言うなら、序盤戦が終わって、今が中盤戦の真っ最中というところかな。
もっとも人によっては、まだ序盤戦の段階をうろうろしている者もいるかもしれないがね。
しかし、まだたっぷり三日はあるのだ。
勝負はこれからだよ。
ここで諦めて投了してしまうのは、まだ早いよ。
誰かがこの迷路から抜け出るまでは、勝負は終わっていないのだからね。
思考の迷路とでも言っておこうか。
そして、この迷路はそれほど長いものではないのだよ。
つまり、正しい入り口から入り、そして正しい道順をたどれば、意外と早く出口が見付かるはずだ。
ただここで問題なのは、正しい入り口を見付けられるか、どうかだね。
昨夜も言った通り、入り口はいくつも用意したよ。
そして、間違った入り口から入れば、必ず行き止まりにぶつかるともいったはずだ。
諸君達の中には、すでに経験した者がいるかもしれないね。
そこで今夜は、正しい入り口を見付けるためのヒントを出そう」

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