あちこちが焼けて黒ずんだ彼女の家は不気味なほど静かに建っていた。
―生きているの…?
そんな疑問が心を乱し、ドアノブを持った手を震わせる。
彼女はしばらく手を震わせた後、目をかっと見開いてドアを勢いよく開けた。
ドアから漏れた光が暗い部屋に降り注いで、黒ずんだ床や壁を明るく照らし出した。
「う…あ…」
彼女はそこにある光景を見て、口元を手で覆いながら座り込んだ。
中には三つの骸が折り重なっていた。
その上には錆びた剣が突き立てられている。
「…ぐ…」
彼女は唇を噛んで、震えながら骸の傍まで寄って行った。
―お姉ちゃん、僕もお姉ちゃんみたいに強くなるんだ!
「エル…」
―美味しいスープが出来たわよ。
「母さん…」
―フール族としての誇りを忘れるな。
「父さん…」
家族の言葉の一言一言が、胸に深く響いてくる。
「父さんの…服…母さんの…エプロン…エルの…おもちゃの剣…あああっ!」
震える手で骸を確かめながら、彼女は嗚咽を漏らした。
―…許さない…。
彼女は三つの骸を抱きしめて、唇を強く噛んだ。
唇からは赤い血が流れ落ちてくる。
―絶対に許さない!村人や父さんと母さん、そしてエルの命を奪った奴は必ず殺してやる!この私が!
瞳を血走らせ、彼女は涙を流した。
流れ落ちた涙は唇から流れ落ちた血と混じり合い、骸に吸い取られていった