聖人とあたしがユカの家に招待されたのは、
森宮親子が消息不明となってすぐの事だった。
そして、
教育長さんが、教育長を辞任したと知ったのも、
その数日前、
新聞の片隅の小さな記事として取り上げられたからだった。
『やぁ。聖人君に木下さん。
いつも、うちのわがまま娘がお世話になってます。』
ユカのお父さんは、一流企業の役員だ。
あたしも、今日初めて会うんだケド、
第一印象は――
なんか、
いかにもインテリっぽいカンジ。
『お久しぶりっス!!
オジサン。』
『初めまして。
木下 奈央です。
あ‥あたしこそ‥‥いつもユカにお世話になってましてっっ。』
聖人は、ユカと幼なじみで、
つい最近までは、ご近所同士だったワケで。
『なぁに、奈央ったら。緊張しなくていいよォ!!
今日は、お父さんの自慢の手料理の数々を、お2人に御堪能して頂きたいと思いまぁ〜すっっ!!』
テーブルの上には、高価そうな食器に綺麗に盛り付けられたお料理。
ワイングラスの代わりにジュースのグラス。
まるで高級レストランみたいに、
綺麗にテーブルにセッティングされたナイフとフォーク。
『すげぇ〜!!
美味そ〜!!』
『ま‥聖人ったら!!』
広いお部屋に案内された瞬間から、
何もかもが、驚きの連続だった。
ユカのお家が、お金持ちだってコトは分かっていたケド、
これほどまでとは思ってなかったんだ。
お料理は、とても美味しくて、美味しくて、
ほっぺが落ちそうだった。
『ところで聖人君。
体の方は大丈夫なのかい?!』
ユカのお父さんの言葉に、
あたしはドキリとした。
あたしよりも早く、聖人に出会い、
聖人の小さな頃から知っている筈だからだ。
『あぁ。全然大丈夫っスよ。』
そう言うだろうとは思ったケド、
あたしも、
聖人には、もっと体を大切にしてほしいっていつも思ってる。
聖人の言葉に小さくうなずき、
ワイングラスを手に持つと、
ユカのお父さんは、静かに語り始めた。