七色の金魚?

MINK  2006-08-30投稿
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公園からそう遠くはない雑貨屋さんで前から可愛いと思っていた、金魚鉢を買った。
相変わらず七色の金魚は窮屈そうに袋の中を泳いでいた。
その雑貨屋さんにいた子供が不思議そうに金魚を見つめていた。
私は少しだけ自慢げになった。
何だか不思議な気持ちだった。
彼がいたら、どういう反応をしたのだろう。そんな事を考えた。
不意に夏祭りの金魚の事を思い出した。

「絶対に欲しいの!!」
私は、金魚すくいの屋台の前で駄々をこねた。別に大して欲しかった訳ではなかったのだけれど、彼が困った顔をするのが私は好きだった。
彼の前では私は素直になれた。
「ちゃんと育てられる?」
彼は、優しく笑って私の顔を覗き込んだ。私は、下駄を履いた自分の足に目を落として頷いた。
「よし!!」
彼は、優しく笑って私の頭に手を置いた。
「おじさん、どの子が一番元気かな?」
そう言って、金魚すくいのすくいとお金を交換していた。
叔父さんは優しく「その子なんていいんじゃない?!」と笑っていた。
結局、彼は3回挑戦したのだけれど1匹も釣れなかった。
それを見かねた叔父さんがその元気な金魚を1匹くれた。
「ごめん。実は‥苦手なんだ。金魚すくい」
そう言って、申し訳なさそうに下を見つめた。
私は、「でも、金魚もらえてよかったね」と彼に笑いかけた。
「長生きするといいね」
彼はそう言って笑いかけた。私も彼に笑い返した。
でも、不思議な事にその金魚は彼が死んだ3月7日の朝に死んでしまった。
彼に電話でそれを告げた時、とても悲しそうに「幸せだったかな?」と言っていた。
私は「幸せだったよ」と言う事しかできなかった。



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