「ライオンのサファリが死んだ!?どういうことなの、団長!」
イーディは信じられないという表情で団長に詰め寄った。
「サーカスの公演が終わった後、誰かがサファリの部屋に入って、ショーで使うマスケット銃を使ってサファリを殺したんだ」
「それ、おかしいよ…だって、ショーで使うマスケット銃には実弾なんて入ってないんだよ!殺せるはずない!」
「わからん。もしかしたら、マスケット銃の弾を持っていたのかもしれん。どっちにしろ、サファリは、その誰かに殺された…」
サーカスの人達は、みな悲しそうに俯き、子供達は泣き出した。イーディも涙を流した。
僕はイーディ達の傍にいたかった。ライオンのサファリとは何の思い出もなく、悲しめないが、イーディ達の傍にいて慰めてあげたかった。
「タナーおじさん、僕…」
僕はタナーおじさんの袖を引っ張り、その願いを目に込めた。
しかし、おじさんは首を縦に振らなかった。
「ダメだ。お前には、手伝ってもらう事がある。大体、お前には関係の無いことだ!お前はキリストの面倒さえみていればいいんだ!余計な事をするなら、追い出すぞ!」
「だって、友達なんだもん!」
タナーおじさんの怒鳴り声はみんな聞き慣れていたけど、僕の怒鳴り声は初めて聞くせいか、みんなが僕に視線を集めた。
「僕に初めて出来た友達が悲しんでいるのに、近くにいてあげないなんて、友達じゃないもん!」
僕は少しずつ目に涙が溜まってきた。
ぼやける視界に憤ったタナーおじさんの顔があった。
「あぁ、その通りだ!お前は、あんな奴らとは友達じゃない!俺が孤児院から引き取ってやった恩を忘れたのか?孤児院から出なきゃ友達なんて作れなかったんだ!お前の権利は、この俺が握ってるんだ!黙って言うことを聞かんか!」
この一喝で、僕の世界は酷くちっぽけなものに見えた。
所詮、孤児は孤児。親に見捨てられる落ちこぼれ。死に行く運命だったのを、孤児院に助けられた落ちこぼれなんだ。
タナーおじさんの言う通りだ。タナーおじさんのおかげで今があるのに…。僕は立場をわきまえていなかったんだ。
「………はい。逆らってすみませんでした。二度としませんので、追い出さないで下さい」
僕は出来るだけ頭を深く下げた。
そうだ…僕に、友達なんて作れないんだ。