父親へのメール。
「亜弥妊娠したんだけど、実家帰って良い?
春樹は産んじゃダメって言ってるけど、亜弥は産みたいから、実家帰って、赤ちゃん産んで良い?」
また、両親を傷付けた。
私は本当に最低な人間だと思った。
それでも、もう両親に頼るしかなかった。
少しすると、父親から返信が来た。
「家もお金無いから、出産費用は出してあげれないけど、帰って来るのは良いよ」
父親は、いつも私を攻めたり、問い詰めたりしない。
その日の夜、母親からメールが来た。
「お父さんから聞いたんだけど本当なの?お母さんは、亜弥がそうしたいなら、協力するよ」
一人で悩み、不安だった気持ちが、少し楽になった気がした。
妊娠に気付いてから、一ヶ月。
もうすぐ、二月が終ろうとしていた。
三月になったら、実家に帰る予定だった。
その日の夕方、母親から電話が来た。
私が電話に出ると、母親がいきなり質問をしてきた。
「本当に産むの?」
「うん」
一瞬戸惑ったが、私は即答した。
「世の中には、産まないっていう選択肢もあるんだよ。お金はどうするの?
家も今、お兄ちゃんも弟も働いてないから、余裕ないし、産まない方が、亜弥の為って事もあるんだよ。
子育てって、本当に大変なんだよ。
とにかく、帰ってきたら、働いてくれないと、家も余裕ないから」
母親が心配しているのは、解ってた。
でも、もう聞きたくなかった。
「いらない」
「産むな」
「産まないほうが良い」
誰も喜んでくれない私の妊娠。
自分が悪い事は解ってる。
私は、実家に帰るのを辞めた。
そして、妊娠している事を隠したまま、バイトを探した。