ホテルで、寝ようとしていた義人の携帯が鳴った。
見慣れない番号だったが取った。
「はい…」
「もしもし…こんな遅くにすみません。あの…かすみです」
「ああ!どうも!お久しぶりです」
「すみません、哲さんに、番号聞いて電話したんです。本当にすみません」
「全然!前にあった時に、番号聞いてなかったし、俺の方こそ連絡するべきだったよね。…ただ、哲と会う予定があったみたいだから、遠慮しちゃったんだよね…」
「…そうですか。私、単純に義さんの声が聞きたかったんですよ」
「え?」
2人の間に、しばしの沈黙が生じた。
「本当に?俺の声が?」
「はい。義さんには迷惑だったかもしれないけど…」
「迷惑じゃないよ。むしろ嬉しいよ。寂しく寝ようとしてたから…。またこうして、かすみさんと話すことが出来て、哲には感謝してるし。
せっかく、知り合えたんだ。…今こうして、かすみさんと話せることを、感謝しなきゃね」
「…ありがとう。私、そんなこと言われるのはじめて…」
かすみは、やっと義人に対して、敬語を使うことを止めていた。
「やっと、俺に対して、フレンドリーになってくれたね。…なんか、もっと本音で話せる気がするよ。せっかく、こうして話せてるんだもん」
「本当ですか…あっ本当に?私もっと、自分のことぶつけていいんだ?」
「それそれ!だって、その方が、自分の気持ちが伝わると思うんだ。今のかすみさん、充分固さが取れてるよ。声だけだけどね(笑)」
かすみは、義人のことを思いつつも、感じていた壁のようなものが、取れたような気がした。
「あのね義さん。明日何時頃帰るの?」
「夕方だよ。6時の飛行機で」
「じゃあ、会える時間ある?明日私休みだから…」
「もちろん!喜んで。こんな俺と、時間作ってもらえるなら、こちらこそよろしく!」
「ありがとう。じゃあ、明日待ってますね。お休みなさい」
「うん。お休み」
かすみの電話を切った義人は、かすみが何かの思いを、ぶつけようとしているなと感じた。