第一章〜好きになる前〜
「おはよう!」
元気良く教室に入り挨拶した瀬野加奈美は、今日の授業の準備に取り掛かった。(確か今日のお弁当にはからあげが入ってたよね…?うわ〜!お腹すいてきちゃった!)
アツアツのからあげを想像しながら満面の笑みで支度をした。
昼食時、やっぱりお弁当箱にからあげが二つ、入っていた。
でも、先程想像したアツアツではなくて、水分を吸った少しフニャフニャのからあげだった。
「えー、そんなぁ。湯気がでてて…、カリカリで…。」
「何言ってんの!?またからあげの話!?相変わらずねぇ、カナは!」
同じ班の松田良子に突っ込まれてしまった。
良子は呆れた顔で箸を持つと、加奈美の弁当箱に入った二つのからあげを箸でブスッ!とさした。
「ちょっ!何すんのよぉ!」加奈美が眉間にシワを寄せて怒ると、良子は八重歯を見せてこたえた。
「だってカナはフニャフニャからあげいらないんでしょ?だぁったらカナなんかに捨てられるより私に食べてもらった方が幸せなんじゃない?からあげ君も。ねぇ?」
良子は箸でブッさしたからあげにむかって話し掛けた。
「あんたねぇ!箸でさしてる時点であんたにもらわれたからあげも不幸でしょ!」