アキの目に、涙が貯まってきた。
カズヒロから、強引に鉛筆を奪った。
『騙してた…って事?』
「いや、違うんだ。騙してたわけじゃないんだ。」
『騙してたじゃない?』
アキは、ノートを乱暴にしまって、走っていった。
カズヒロは、アキの後を追う。
「アキ!」
何度呼んでも、聞こえやしない。
アキに追いついたカズヒロは、彼女を振り向かせた。「ごめん…。×ゲームだったことは事実なんだ…。」『…。』
「本当に悪い事をした…と思ってる。ごめん…。」
『…。』
アキは、ただ泣いていた。悔し涙。騙されたという、悔し涙を。
「でも…この×ゲームのおかげで…。」
『?』
…なに?頭の中を、変なものが巡っている。
アキの頭の中を。
「アキの事…好きになった。」
アキは、少しドキッとしたが、平静を取り戻して、
ノートにこう書いた。
『私は、あなたのことが、嫌いになった。』
アキは、一人で歩いていった。
あの時のアキの背中は、震えていた。
俺、抱きしめてやりたかったけど、出来なかった。
『私は、あなたの事が、嫌いになった。』
何度も、この言葉が、カズヒロの頭を、突き刺すように響き渡るのであった…。