雅則は四本積まれたビデオテープの一番上を手に取った。
「まず初日のテープだが、ここで重要だったのは、私の飼い猫が『三毛猫』で、その名前が『パブロ』だということだ。
パブロの名の由来が、あの画家の『ピカソ』だということは、そのあと話したはずだ。
また初日のテープは、もう一度再生してよく見るように、とも言っておいたはずだね。
このテープに関する注意事項はそのくらいかな。
もし勘のいい者がいれば、この初日のヒントだけで白のクイーンに行き着く事が出来たかもしれない。
が、それはかなり厳しいはずだ。
では、二日目のテープに移ろう」
そう言って、次のテープを手に取った。
「このテープの中で、私はこのゲームの最も重要な部分に触れた。
すなわち、
『捕らわれのクイーンを救い出し、正しき位置に導け。
されば扉は開かれん』
とね。
捕らわれのクイーンとは、あのチェスの部屋からなくなった、白の水晶のクイーンのことだ。
そして、遺産相続の権利書を手に入れるためには、かならずこの白のクイーンのチェックポイントを通らなくてはならないとも言った。
これが二日目の要点というところかな。
では、三日目のテープの検討を始めよう」
そう言って、またテープを持ちかえた。
「しかしその前に、多分諸君達が頭を抱えているであろう、あの暗号のようなアルファベットと数字の羅列について触れておこう。
あれは決して暗号ではない。
もしあれを暗号と勘違いして、解読しようとした者がいたなら、それは徒労に終わるはずだ。
実はあれの意味は…
いや、それはやはりクイーンを救い出した時に明らかになるはずだ。
では、テープのほうに移ろう。
この日のテープでパブロがピカソの暗示であることを公表した。
これは前に述べたので、ここでは控えよう。
この三日目のテープで、私は『迷路』という言葉を使った。
確か、思考の迷路とも言ったね。
これもまた、重要な暗示のひとつなのだよ。
では、昨夜のテープ、つまり最後のヒントのテープの解説といこう」
そう言って、四本目のテープを手に取った。