岬が俺と桜井の同性愛の噂を流してから、明らかに周囲の見る目が当たり前だが変わった。
俺と桜井が何か始めると、周囲がざわざわする。
桜井の奴はまるで、それを面白がっているようで、席替えは偶然にも桜井の隣になった。
ある数学の授業中、桜井がちょっと手を貸してみて、と言うから何も考えずに手を差し出すと、数学教師の鈴木から
「桜井、相馬、授業中に手を握ってるなーこの問題をやってみろー」
と指名されてしまった。
「やっぱりねー」
と言う声が女子生徒の声が聞こえた。
「お前のせいだぞー」
と俺が桜井に言うと、
「なんのことかなー」
ととぼけていた。
黒板に出されていた問題は、難解だったが、何とか解くことが出来た。
得意げに席に戻ると、
「二人とも正解、しかし授業中に手を握るのはやめてくれー、やるなら休み時間にしろよー特に女子生徒が落ち着かないからなー」
と鈴木は言った。
クラスはすっかり俺と桜井の話題で持ちきりとなり、俺は良いのか悪いのか、よくわからないまま、深みにはまる様な妙な雰囲気になっていた。
岬に約束したように、毎日桜井をバイクで送り迎えをした。
しかしそれは、香里が送り迎え出来なくなったからだ、このごろ判断力が鈍るらしく、車の運転が出来なくなっていたのだ。