「それは?」
「サイファ様が監禁される前に書いたものです」
「監禁される前に?」
サクリスは目を大きく見開いた。
「はい。サイファ様はこうなる事を監禁前に既に予想されておりましたので」
「ほう…」
「どうぞ」
リカルドは僅かに前に出て、サクリスに手紙を手渡した。
「…ふむ…」
サクリスは手紙に目を通すと、一つ小さく頷いた。
「いかがでしょうか?」
「よく練られている。これなら上手く運ぶであろう」
「では…」
「だが、リスクが大きい事に変わりはない」
彼は難しい顔で二つ目の手紙を懐にしまった。
「…あなた様が事を起こさないのであれば、我々は最終手段を取ります」
リカルドはキラリと目を光らせながら、サクリスを見据えた。
「最終手段だと?」
「国の為なら我々は命を賭ける用意があります」
「…ならん!」
サクリスは驚いて、慌てて首を横に振った。
「それはならんぞ!それを行えば国は必ず乱れる!」
「命を賭けて国を守るのが真の忠臣にございますので」
「…忠臣…か」
彼は呻くように呟くと、リカルドを睨んだ。
「便利な言葉よの。『忠臣なれば』とのたまえば何でも正しく聞こえてしまう」
「確かに。ですが、正しいか正しくないかを判断するのはあくまであなた様でございます」