「泣くなよ･･･､泣くな｡」
淳は少し､はにかんで､私の掌に触れ､弱い力で握った―＼r
「だって･･･､あっちゃんが死ぬなんて言うから｡」
淳は､私の言葉を聞いて､急に真剣な顔をした｡
「何となく､長く無いのかなぁ〜って判るんだ､自分で｡」
「あっちゃんは､元気になるよ､きっと･･･｡長く無いなんて､言わないで｡」
「でも･･･､頑張るよ｡諦めない｡」
「うん･･･｡」
私は､淳の手を強く握り返した―＼r
「少し､眠っても良いか?」
「うん･･･､ゆっくり眠って｡」
淳は､ゆっくりと目を閉じた｡次はいつ､目を覚ましてくれるのだろう―＼r
私は､不安な気持ちを抑えられ無かった｡
午前五時―＼r
「ねぇ･･･?秀樹､起きて｡」
繭子と中川は､別荘のﾍﾞｯﾄの上だった―＼r
繭子の声で､中川は目が覚めたが､寝た振りをした―＼r
睡眠薬の効き目が切れたのか―＼r
「ねぇ､ねぇってば!!」
繭子は､中川の左肩を揺すった｡
「ん･･･?どう･･･した?」
「目が覚めちゃった｡何で､さっきは､急にあんなに眠くなったんだろ?」
「疲れてたんだろ?ｷｽしてたら､寝ちゃったじゃん｡俺は､眠いよ･･･｡」
「疲れてても､あんな事無いのにな､普段･･･｡」
「そう･･･､寝かせてよ｡眠いんだって｡今･･･､未だ五時でしょ?」
「えっ･･･?だって､目が覚めちゃったんだもん｡今からしようよ｡さっき､途中だったでしょ?ねぇ､秀樹･･･｡」
「俺､眠れなくて､さっきやっと寝れたんだよ｡悪い､勘弁してよ･･･｡」
「じゃあ･･･､秀樹のﾊﾟﾊﾟに言っちゃおっかな･･･?」
「何を?」
中川は､むっとした表情で繭子に問掛けた―＼r
「さっきの､薬の事｡」
「分かった､分かった｡起きるよ･･･､待って｡」
中川は､繭子の身体の上に被さった―＼r
「秀樹･･･?私､秀樹に婚約破棄された事､実は､今でも根に持ってるのよ?知ってた?」
「悪かったよ､あの時は､ほんとに･･･､ｺﾞﾒﾝ｡」
「嘘･･･｡悪かったなんて､本当は思って無いくせに｡お金で解決したと思ってるでしょ?女って､そんな簡単じゃ無いんだからね｡」
「俺は､繭子と結婚したかったんだ･･･｡これは､本当だよ?親父が､どうしても許してくれなかったからさ｡」
「分かってる･･･｡じゃあ､抱いてくれるわよね?」
「あぁ･･･｡」
嘘の言い訳を重ねた自分を中川は､惨めに思っていた―＼r
本当は､繭子の事など愛してはいなかったのに―＼r
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