たぶん、ごめんねって言いたいんだと思う。
私を、耳の聞こえない子に産んでごめんねって、言いたいんだと思う…。
でも、そんな言葉、聞きたくなかったし。
自然と、手話がとまる。
アキは、泣いているお母さんに一枚の紙を残し、自分の部屋へと戻っていった。
部屋に戻ると、携帯にメールが届いていた。
『サユからメアド聞いちゃった。カズヒロです。よろしく。』
アキは、複雑な顔になる。私の事を愛してくれる人…。
私の事を支えてくれる人…。
幸せになれるのかな…。
アキは、自分を奮い立たせた。
ネガティブな自分は嫌いだ。どっか行ってしまえ。
心の中で念じた。
アキは、カズヒロにメールを返した。
『よろしく。』
ただ、それだけ。
本当は会いたかったんだけど。
アキは、リビングの方へ戻って、再びご飯を食べ始めた。
泣き疲れたのだろうか。お母さんは寝ていた。
お母さんを起こさないように、静かにご飯を食べた。
お母さんが、アキが残した手紙に気づいたのは、夜遅く、
「あっ。ごめんお母さん寝ちゃ…。」
アキは、もう寝ていた。
お母さんは、アキが残した手紙を読んだ。