『お母さん泣いていたので、話すの止めました。
私の耳が聞こえないのは、誰のせいでもないんだよ。今は、私を支えてくれる人がいっぱいいて、とても幸せなんだ。
ろう学校に行かせないために、先生と対立した友達だっていたから、私とても幸せ。』
「アキ…。」
お母さんは、その手紙を胸に押しつけた。
大切そうに。
白愛高校。
「おはよう。」
『おはよう。』
カズヒロが登校中に話しかけてきた。
「そういえば、ろう学校の事、どうなった?」
『まだ…先生に勧められそうな気がする。この事、お母さんに言ったら泣いちゃって…。』
「そうか。俺、今日も先生に言ってくる。」
アキは、カズヒロを呼び止めた。
『いいの。』
「え?」
『私の事だから…もうこれ以上、カズヒロに迷惑かけたくない。』
カズヒロは笑いながら、
「じゃあ、もし俺が大変なことに直面したら、アキはボーッと見てるだけ?」
『…それは。』
「だろ?ほら、時間ないから行くぞ。」
カズヒロは、アキの手をとり、走り始めた。
「マジやばいかも。時間。」
カズヒロの手は、温かくて、包み込んでくれるような手だった。