「おい遅いぞ。2人とも。」
ユウタがせかした。
「ハァー、ハァー、なんとか間に合って良かった〜。」
『良かった…。』
するとサユが、
「なになに〜?2人、手なんか繋いじゃってさ。」
カズヒロは顔を赤らめた。「…ひゅーひゅー。」
アキは、照れ臭そうにカズヒロの手を離した。
その光景を、憎そうなまなざしで見る女子4人。
4人のうちの、リーダーといってもいいのか、アズサは、
「調子乗ってんじゃねーよ…。」
…いじめが、始まろうとしていた。
「耳が聞こえないくせに…。」
私には、聞こえないいじめが。
知らない所で。
「あいつ…保健委員だよね。」
アズサの目が光る。
「あっ、まさかアズサ…。」
「ご名答。仮病使うのよ。授業中に。」
アズサの計画が、今始まろうとしていた。
「この動詞は、ラ行変格活用が使われていて…。」
「先生!」
「…何?」
「アズサさんが…お腹痛いって…。」
「えっ…保健委員!」
アキは、サユに呼ばれた。「アズサさんが、お腹痛いって…、だから保健委員って…。」
アキは、手をあげた。
「じゃ、連れてってあげて。」
アキは、保健室に連れていった。
その途中、
「ごめん。トイレいい?」『…分かった。』
唇の動きを読み取り、アキはアズサをトイレに連れていった。
そのトイレの中に、数人の女子がいた。
「来た来た。耳の聞こえない、ろうの人。」
アズサも、ケロッと態度を変えた。
「分かるようにゆっくり言ってあげる。耳の聞こえない、ろう女!」
…笑ってる…。
…私の事、バカにしてる…