店主は半信半疑で、でもどこか恐怖の色を帯びた目で少女を見つめた。
「はい、魔竜はおっしゃるとおりの恐ろしい力を持った竜の王です。」
「それを追って?…ってこの近くに来てるのかい?」
女将は少し取り乱した声色で不安げな表情になった。
「昨夜この街から少し北に行った森までは確かに追跡できていたんですが…雨で月明かりが消えてしまって、奴の鱗は闇に紛れると見失ってしまうので。」もう老夫婦からは言葉は返ってこなかった。
この世で魔竜と対峙したものは魂を地獄に引き込まれる…子供の頃おとぎ話で何度も聞かされた。大人になるにつれ忘れられ、ここ数年、突然現実にその魔竜の存在が噂されるようになっていた。