記憶喪失だとしたらまともに学校に通えるわけない。雪野がそう答えると京都はまだ頭を抱えながら
「え〜と言い方が悪いな………?記憶障害?って言った方がいいね」
京都は別の言葉を探して答えた
「記憶障害?」
「そう。一部分の記憶がなくなる障害があるって、優から前聞いたことがあるんだ。例えば、ある人の記憶だけがすっぽりと無くなってしまったり、信じがたい事が起こって忘れたいと思うあまりその事を忘れてしまう事があるんだよ」
京都は優から昔言われたことを思い出しながら話すと
「へ〜そんなことってあるのね………ってそれってもしかして!!」
「そう!僕が思ったことは、雪野さんは事件が起きた一昨日の十月十一日に事件現場に行っていた。多分偶然だと思うけど、あの事件現場に行ってしまって偶然人が殺されるところを目撃してしまった。そして、運よく逃げ切れた青山さんはその現実に耐えきれなく忘れたいと願うあまり記憶を失い別の記憶とかぶってしまった………」
京都がそこまで話すと雪野は信じられない様子で口を手で押さえていた。京都は
「あくまで推測での話だよ」
と、慰めるが
「いいえ………推測じゃないわ。もし、そうだったらつじつまが合う。私が事件現場を見ても事件のことを思い出さなかったことや被害者の顔に見覚えがあることや私が指名手配になったことも……」
雪野の体が震えて自分を責めていた。それもそうだ。人一倍正義感がある雪野が、目の前でひとが殺されたから忘れたいといって、翌日警察に通報もしないでノコノコと学校に通ってること、正義感を語っているのにいざという時に何もできない自分が許せないのだろう。しかし、通報しなかったおかげで雪野は犯人として捕まらずに逃げ切ることが出来たのもまた事実……自分を責めている雪野に京都が
「けど、渡沼は通報してもしなくても、青山さんを殺人犯として扱ったよ。それより、犯人の渡沼は青山さんを犯人にして悠々と指示しているんだよ?」
と、慰めた。そう………真犯人である渡沼は今もなお、のんびりと警察のトップに立って雪野を追い詰めようとしているのだ。
そう、今は自分を責めている暇はないのだ。