彼女は遠くて暗い森にいた。何も持たずに、ただ立っていた。ずっと空を見てただ立っていた。遠くに遠くに行ってしまいそうな、早く掴まないと、消えてしまいそうな予感が胸をよぎった。
彼女は何故か泣いていた。途端に泣き崩れてしまった。どうして泣いているのだろうか。
彼女は何かを言った。聞こえないような小さな声で。近づいていったら、今度はハッキリ聞こえた。
「なんで死んじゃったの!」
ピピピピッ
ピピピピッ
ピピピピッ
「う〜ん、今何時だよ…ゲッ!8時じゃん!」
秋(しゅう)は、慌てて学校の準備をして朝ご飯も食べずに家を出た。8時に起きても遅刻はしない。何故なら、家から3分の所にあるからだった。いつもならまだ、ゆっくりしているが今日は日直だった。
靴箱にいき、靴を脱いで上履きに履いているときだった
「おっそ〜い、何してるのよ!全部私がしたのよ!」
「ごめん、今日もいつも通りに起きちゃって!帰りは全部俺がするからさ」
「当たり前よ!まったく、ちゃんとしてよね!」
「本当にごめん!」
そういうと委員長は教室に怒りながら入っていった。後から俺も入った。
今日も1日何も変わらずに過ぎていく。面白くない授業に、友達との楽しい会話。そう、いつも通り‥。
下校の時間になり、帰ろうとしていたら委員長が
「日直の仕事、やってね!」
「は〜い」
怒気丸出しで教室を出ていった。
教室には俺一人になってしまった。静かな教室に。
日直の仕事をしていた時だった。一人の女の子が声をかけてきた。
「大変そうだね。私も手伝ってあげようか?」
見たこともない顔だった。転校生かと思ったが、そんな話聞いていなかった。
「いいよ。一人で出来るし。だいたい女の子に手伝ってもらうなんて恥だ。」
「大丈夫だよ!誰も見てないし!」
「見てるよ」
「えっ、誰が?」
辺りを見回した。でも、誰もいなかった。
「誰も見てないじゃん」
「見てるよ。お前」
「私?大丈夫だよ!誰にも言わない」
そういって手伝いだした。
「お前さ、誰なんだ?見たことないけど、転校生か?」
「・・・、違うよ!本当に覚えてないんだよね。」
悲しそうに笑う彼女は、どこか懐かしい感じがした。
分からない何かが、頭に引っかかっていたが、儚く消えてしまった。