…職員室。
応接コーナーに呼ばれたアキ。
「やっぱり先生ね…ろう学校に行ったほうがいいと思うの。」
柴山先生は、またあの入学案内を見せてきた。
『だから先生言いましたよね?私はここには行きません!』
すると先生の目つきが変わった。
「…ちょっと…別の場所で話しましょ。」
…社会科室。
なぜ、アキをここに移動させたのか。先生の真意が今分かる。
「アズサさんに、いじめられてたでしょ?」
『…悪い意味では、まあ…。』
アキは曖昧な返事をした。「アズサさんはきっと、あなたが耳の聞こえない。つまり、違う世界にいる人だと思って、いじめたんだと思うわ。」
アキは、複雑な顔になっていく。
「アキさんわかって…。」『…。』
次の言葉が、アキの心を深く傷つけた。
「ここは、ろうの人が通う学校じゃないの。」
グサッ…。
サバイバルナイフが、刺さったような言葉…。
アキは、今にも倒れそうな歩きで、帰っていった。
その夜、
…歩道橋の上。
行き交う車をボーッと眺めたまま、アキは携帯を開いた。
カズヒロからメールが来ていた。
『古典の時間どうしたの。帰り遅かったけど。』
アキは、すぐさまメールを閉じた。
しかし、一言サユに、
『もう私…生きていけない。生きる希望を失ってしまった…。』
とメールした。
アキは、携帯を再び閉じて、そっと目をつむった。
足が、ふいに
歩道橋の手すりを越える。
アキの心は、
ずたずただった。