『耳が聞こえねーくせに、調子乗りやがって…ムカつくんだよ!』
『ここは、ろうの人が通う学校じゃないの!』
…泣かないと…
強い私が、勝手に決めつけてた。
だけど、もう悔しくて…。
カズヒロ…今までありがとう。
アキは、機械のように、表情ひとつ変えないで、物思いにふけっていた。
「カズヒロくん!」
一方サユはパニックに陥っていた。
急いで電話した。
『何?』
「アキが…アキが死んじゃうかも知れない…。」
『え?』
カズヒロ側も驚いていた。「私、必死で探しているけどいなくて…家にも帰っていないらしいの。」
『マジかよ。俺も探す。』「ありがとう。」
カズヒロは急いで家を出ていった。
カズヒロは、一生懸命にアキを探した。
「アキー!」
アキには、聞こえないのに、叫びながら探した。
まだ5月とはいえ、走り回ると汗が出てくる。
カズヒロは、駅、公園、商店街、いろいろ探した。
「いない…。」
すると、歩道橋の外に身を乗り出している1人の女子を見つけた。
暗くてよく見えなかったので、カズヒロはゆっくり近づいていく。
長い髪に、オレンジのバッグ。
アキだ…!
後ろからでも分かる。
カズヒロは、歩道橋を駆け上がった。
「アキ?」
アキは振り返らない。聞こえるはずがない。
アキの手が、ゆっくり手すりからほどかれていく。
…今にも…
落ちようとしてる?
「アキ…?」
カズヒロは精一杯叫んだ…