歩道橋の手すりから離れ始めた手を、カズヒロは間一髪掴んだ。
「アキ?今助ける?」
アキは、歩道橋に宙ぶらりん状態だった。
もし、あとちょっとカズヒロが遅かったら、アキは死んでいただろう。
何とか、歩道橋の中へ引きずり込んだカズヒロは、汗だくの顔で、
「良かった…。無事で。」『…カズヒロ…。』
「何で、自殺しようとしたの?」
アキは黙り込む。
「何で、かけがえのない命を、捨てようとしたの?」アキの目に、涙が貯まってきた。
「よし!話ありそうな顔してる!俺聞いてやる。話してごらん。」
『別に…何でもないよ。』アキは、最後の最後まで誤魔化そうとした。
「本当かよ。だって、涙が出てきちゃってるよ。何か、悲しいことでもあった?」
…私を…支えてくれる人…。
あなたの姿が、すごく輝いて見える…。
ありのままの私を、打ち明けられる人だ…。
アキは、震える手で、伝え始めた。
『カズヒロは、ありのままの私を…受けとめてくれる?』
カズヒロは頷いた。
『ありのままの私を…支えてくれる?』
アキの涙が、手話をしている手に落ちた。
カズヒロは、さっきより大きく頷いた。
『これからも…ずっと?』
最後の質問。手話もゆっくりやった。
カズヒロの目も、潤み始めた。
『ずっと…一緒にいてくれる?』
カズヒロは、手話で伝えるアキを止め、抱きしめた。
『ずっと…。』
「うん。」
『私は…カズヒロのこと…好き。』
アキはカズヒロの胸にうずくまった。
「何だよ急に。」
『みんなから急かされて、かしこまって言えなかったから…。』
カズヒロは頷いているようだ。
『私…アズサっていう女に、言われたの。』
「なんて?」